鬼殺隊への入隊と担当鍛冶師との出会い
師範の説得のもとに、冨岡と言う男に連れられ"鬼殺隊"へとやってきた。
私の力をもっと試せるのだろうか。
そう思うと、どこか落ち着かなくなった。
鬼の首を切り落とした時の感触は、もう忘れてしまった。
あまりにも一瞬で、身体がもっと斬ることを望んでいるような感覚がする。
男の後をついていくと、連れられたのは大きな屋敷だった。
「あなたが、篠夢子だね。」
屋敷の奥から脳を撫でるような声で現れたのは、生力が薄く今にも死んでしまうのではないかと思うほどに弱い男だった。
「左様でございます。」
そう返し、一礼をする。
弱い男にしては、どこか見透かされるような感覚がする。
おそらくこの鬼殺隊の核たる人物なのだろう。
「話は大まか聞かせてもらったよ。
ご先祖様が、元鬼殺隊の柱だったと言うことも。
……大変な目にあったね。」
抑揚の少ない口調で話す男は私に言葉を続ける。
鬼殺隊の一員として共に戦ってほしいと言うこと、そして今持っている刀を刀鍛冶の里に持って行き、手入れを頼んでほしいこと。
決して強要するような物言いではなく、それらは全て彼の頼み事として叶えられるかどうかを伝えていた。
「産屋敷様、私はまた刀を振るえる事に嬉しく感じております。人のために成るのならば、喜んでこの身を鬼殺しとして生涯捧げます。」
私のその言葉に彼は優しく笑うと、一言「ありがとう」とそう私に投げかけた。
鬼を狩る為にはまず日輪刀と呼ばれる刀が必要らしい。
先祖から伝わる刀で鬼を切り裂いたけれど、これはもしかしてその日輪刀なのだろうか。
そんな考えを巡らせながら、私は隠と呼ばれるものに担がれていた。
「直接この刀を持っていくと良いよ。君のその力と刀を存分に引き出す刀鍛冶が現れるだろう。」
産屋敷様は私にこう告げていた。
鬼を斬る為の刀鍛冶がいる。
それを聞いて鈍感な心は少し揺らいだ。
鬼を前に刀を持ったあの日から、私はどこか心が騒がしい。
着きましたよ、の言葉の後に塞がれていた視界が露わになった。
一つの村がそこには存在し、思っている以上に賑わっている様子だった。
「おまいさんがお館様の言っていた篠夢子かね?」
あたりを見回していると背丈の低い老人が私に尋ねてきた。
「はい」
「そうかそうか、こりゃまた別嬪さんが来たことに驚いたわ。まぁ立ち話はなんや、ついて来んさい」
私は頷き、老人の後へと続いた。
大きな屋敷の一室へと案内される。
そこには仮面をつけた複数人の男がいた。
全員同じ火男の仮面だが、どうやら微妙に何かが違う。
その男達の前に座るよう促され、彼らと私は対面している状態となった。
「こんなむさ苦しい状態で悪いのう。しかし、お前さんのその刀の話を聞いて村で腕の立つ者を何人か連れてきたんや。女の子が来るとは思っとらんかってん。」
「いえ、気にすることはありません。是非この刀を確認していただく、そして力をつけていただきたく存じます。」
私は腰に据えていた刀を鞘ごと抜き取り、そして差し出した。
まだ一度しか振るったことのない刀。
けれど一度でもいいから振るってみたいと願った刀でもある。
私の差し出した刀に里長は手を取り鞘を抜いた。
刀身が露わになるに連れ、下面の男達に緊迫が走り皆息を呑む。
やがて鞘が全て抜かれた状態になった時、感銘の声と共に1人の男が声を荒げた。
「もう我慢ならねぇ!!!そいつを寄越せ!!!!!」
そういい里長から刀を奪い取ろうとする男は、他の男達に取り押さえられた。
「蛍、お前が決めることやない!だまっとれ!」
「うるせぇジジイ!テメェら離せ!!そいつを寄越せ!!!!」
まるで親でも殺されたかのように怒鳴り暴れ散らかすその男を眺める。
「里長様、彼にこの刀をお願いできませんか?」
私のその言葉に、癇癪を起こす男以外は全て時が止まったかのようになった。
「連れてきといてなんやが、この男は何度も他の隊士と揉めとる。腕は確かやが、あんまりおすすめはせんがなぁ」
里長は困ったようにそう言うが、揉めてるなどには関心はなかった。
「性格など気には止めません。……お願いできますか?」
「お前さんがそう言うなら構わんが…」
「任せろ」
里長が何か言いかけようとしたけれど、先程まで怒鳴り散らしていた男が遮り刀を手に取った。
まるでその刀に吸い込まれそうに見入っていた。