咲かない花

手を伸ばしても届かない存在だと言うことは、充分分かっていた。

分かっていたのに、その姿を見るたびに目が追って、心が揺れて、届かせたいと願ってしまった。

凛と立つ姿が、いつも遠くを見ているような瞳が、私の胸を締め付ける。

声をかけても、きっと、私と言う存在は、その場で終わりなんだろう。

分かっている。

なのに、名前を呼んで欲しくて、貴方の瞳に私を映して欲しくて、欲が溢れ出てきてしまって、毎日切なくなるばかりで……

名前を呼ばれても、私を見てもらっても、きっと、その先が欲しくなるんだろう。

 

あの日、私を助けてくれたこと、覚えていますか?

 

入隊し、見かけるたびに伝えようかと迷った言葉。

ただ……ただ、覚えていてくれているかを確かめたくて。

もし、覚えていてくれたなら。

でも、覚えていてくれなければ。

怖くて、未だに伝えきれていない言葉。

感謝を伝えたい、でも、それ以上に、私は貴方のことを……。

そんな余裕が無いことも、そんな不純な気持ちを持つべきでは無いことも、十分にわかっているはずなのに。

それなのにこの気持ちは膨らむばかりで、貴方を見かけるたびに溢れてしまいそうで。

 

「……あの日、私を助けてくれたこと、覚えていますか?」

 

小さく呟いた。

届きませんように。

届きますように。

矛盾した心が交差する。

小さく呟いた一言が、私を見てくれますように。